2026年1月16日、社会保障審議会・介護給付費分科会で介護報酬改定(+2.03%)が了承されました。今回の改定は、6月と8月の2段階施行という異例の形で、処遇改善加算の大幅拡充と食費の引き上げが同時に進行します。
「制度が複雑すぎてわからない」「DX要件って何を準備すればいいの?」「利用者にどう説明すればいいのか」――現場からは、こうした声が相次いでいます。
この記事では、2026年度介護報酬改定の確定情報をもとに、事業所が押さえるべき実務ポイントを、賃上げ・DX対応・食費改定の3つの軸で徹底解説します。
1. 改定の全体像|異例の「期中改定」で何が変わるのか
「4月じゃなくて、6月施行?しかも食費は8月?」――改定スケジュールを見て、そう感じた経営者も多いでしょう。
今回の介護報酬改定は、介護保険制度の維持と、深刻化する介護士不足への対応を目的とした、大規模な処遇改善策です。
改定率の内訳

全体で**+2.03%**の引き上げとなり、その内訳は次の通りです。
- 処遇改善分:+1.95%(賃上げの原資)
- 食費改定分:+0.09%(基準費用額の引き上げ)
- その他:-0.01%(効率化等による削減)
処遇改善に約2%を充てることで、介護現場の人材確保を強力に後押しする方針が明確になっています。
施行スケジュール
通常、介護報酬改定は3年ごとの4月施行が基本ですが、今回は**「期中改定」**という形で、2段階に分けて実施されます。
- 2026年6月施行: 介護職員処遇改善加算の拡充(賃上げ)
- 2026年8月施行: 食費(基準費用額)の引き上げ
これは、政府の賃上げ方針と、介護現場の人材確保を急ぐ政策判断によるものです。事業所としては、6月と8月の2回、制度対応の準備が必要になります。
2. 【賃上げの全貌】処遇改善加算の「3階建て構造」と新区分「Ⅰロ・Ⅱロ」
「最大1.9万円って聞いたけど、うちはいくらもらえるの?」――この疑問を抱えている管理者は多いはずです。
2026年6月施行の処遇改善加算では、最大1.9万円の賃上げが実現されます。ただし、その仕組みは非常に複雑です。
3階建て構造の図解イメージ

【3階】定期昇給分(+0.2万円)
─────────────────
【2階】上乗せ分(+0.7万円)← 新区分「Ⅰロ」「Ⅱロ」で取得
─────────────────
【1階】ベース分(+1.0万円)← 既存加算の率引き上げ
この3階建て構造を理解することが、今回の改定を攻略する第一歩です。
① ベース分(全職種+1万円)
従来の「介護職員等ベースアップ等支援加算」を、介護職員処遇改善加算に統合し、加算率を引き上げることで、全職種に月額1万円相当の賃上げを行います。
これは、特別な手続きなしで、既存の加算を取得している事業所であれば自動的に反映されます。介護士の給料の底上げが図られる形です。
② 上乗せ分(+0.7万円)
ここが最も複雑なポイントです。新たに**「Ⅰロ」「Ⅱロ」という区分**が登場し、従来の区分は「Ⅰイ」「Ⅱイ」に名称変更されます。
この表を見て、「うちの事業所はどの区分を目指すべきか」を確認してください。
| 新区分 | 内容 | 要件 |
|---|---|---|
| Ⅰロ | 最高ランク。上乗せ0.7万円が満額取得可能 | ・DX要件(後述)をクリア ・令和8年度中は「誓約書」のみでOK |
| Ⅰイ | 従来の「Ⅰ」に相当 | DX要件なし |
| Ⅱロ | Ⅱの中の高ランク | DX要件クリア |
| Ⅱイ | 従来の「Ⅱ」に相当 | DX要件なし |
ポイント: 上乗せ0.7万円を取るには、**DX要件(ケアプランデータ連携システムの導入等)**が必須です。ただし、令和8年度中は「誓約書」を出すだけで算定開始できる猶予措置があります。
③ 定期昇給分(+0.2万円)
介護職員等の定期昇給を実施することで、さらに0.2万円相当の賃上げが加わります。
新たに対象となるサービス
今回の改定で、以下のサービスにも処遇改善加算が拡充されます。
- 訪問看護:+1.8%
- 訪問リハビリテーション:+1.5%
- 居宅介護支援:+2.1%
これにより、介護士だけでなく、看護師やケアマネジャーの処遇改善も進むことになります。
3. 【最重要】DX要件とは? ケアプランデータ連携システムの導入と費用支援
「DX要件って言われても、うちは紙ベースでやってきたんですけど…」――東京都内のある訪問介護事業所の管理者は、そう漏らしました。
上乗せ0.7万円を取得するためのDX要件とは、具体的に何を指すのでしょうか。
DX要件の内容
サービス種別によって、求められるDX要件が異なります。
| サービス種別 | 必須要件 |
|---|---|
| 訪問・通所・居宅系 | 「ケアプランデータ連携システム」の導入・実績報告 |
| 施設系 | 「生産性向上推進体制加算(ⅠまたはⅡ)」の取得 |
訪問・通所・居宅系の事業所にとって、この「ケアプランデータ連携システム」が最大の関門になります。
ケアプランデータ連携システムとは
従来、ケアプランの共有はFAXや郵送が主流でした。ケアプランデータ連携システムは、ケアマネジャーが作成したケアプランを、各サービス事業所にオンラインで一斉送信できる仕組みです。
厚生労働省は、このシステムの普及を地域包括ケアシステムの実現に不可欠な基盤と位置づけており、今回の加算要件に組み込むことで、一気に導入を進める狙いです。
【重要】費用負担はどうなる?
「システム導入にお金がかかるのでは?」という不安は、事業所にとって最大の関心事です。
しかし、**補正予算により、ケアプランデータ連携システムの利用料が免除(フリーパス化)**される見込みです。さらに、導入支援も延長される予定であり、コスト負担なく導入できるチャンスが用意されています。
「無料で使えるなら、早めに準備した方がいい」――これが、制度に詳しいケアマネジャーからの共通した助言です。
猶予措置:「誓約書」で令和8年度中は算定可能
令和8年度(2026年度)中は、「システムを導入する」という誓約書を提出するだけで、上乗せ0.7万円の算定を開始できます。
実際の導入と実績報告は、令和9年度(2027年度)からの要件となるため、事業所には約1年の準備期間が与えられています。
4. 食費改定と利用者負担|8月施行で何が変わるのか
「食費が上がるって、利用者さんにどう説明すればいいんですか?」――施設の相談員から、こんな声が聞かれます。
2026年8月には、施設サービスにおける**食費(基準費用額)**が引き上げられます。
基準費用額の変更
食費(1日あたり)が、1,445円から1,545円へ、+100円引き上げられます。
利用者負担(負担限度額)の変更
食費の引き上げに伴い、低所得者の負担限度額も以下のように変更されます。
この表で特に注目すべきは、第3段階の利用者です。月額で1,000円〜2,000円程度の負担増となるため、説明の負担が大きくなります。
| 所得区分 | 改定前 | 改定後 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 第1段階(生活保護受給者等) | 300円 | 300円 | 据え置き |
| 第2段階(年金等80万円以下) | 390円 | 390円 | 据え置き |
| 第3段階①(年金等120万円以下) | 650円 | 680円 | +30円 |
| 第3段階②(年金等120万円超) | 1,360円 | 1,420円 | +60円 |
| 第4段階(一般) | 1,445円 | 1,545円 | +100円 |
利用者への説明のポイント
特に第3段階の利用者に対しては、施設相談員やケアマネジャーによる丁寧な説明が必要です。
説明する際は、次の2点を伝えることが重要です。
- なぜ食費が上がるのか
- 介護保険制度の維持と、介護士の処遇改善のため
- 負担増の具体額
- 第3段階①:月額約900円増
- 第3段階②:月額約1,800円増
家族との相談を促し、必要に応じて補足給付の申請状況を確認することも大切です。
5. 現場の本音|訪問介護の倒産危機と「基本報酬」据え置きの課題
今回の介護報酬改定は、処遇改善加算の拡充が柱となっていますが、現場からは複雑な声が上がっています。
訪問介護の倒産が過去最多
2025年、訪問介護事業所の倒産件数は過去最多を記録しました。その背景には、介護士不足による人材確保コストの上昇と、基本報酬の据え置きがあります。
「加算ではなく、基本報酬を上げてほしかった」
処遇改善加算は、使途が「賃上げ」に限定される紐付き補助金です。そのため、事業所の経営改善には直結しにくく、現場からは次のような声が聞かれます。
「加算を取るための事務作業が増えるだけで、経営は楽にならない」
「使途自由な基本報酬を上げてほしかった」
実際、東京都内のある訪問介護事業所では、加算の事務作業のために事務員を1名増やしたところ、その人件費が加算額を上回ってしまったケースもあります。
介護ニュースでも、この点が繰り返し報じられており、事業所経営者の間では大きな議論となっています。
制度の複雑化への懸念
新設される「Ⅰロ」「Ⅱロ」という区分や、DX要件の追加により、制度はさらに複雑化しています。小規模事業所ほど、事務負担の増加に対応しきれず、加算を取得できないリスクが高まっています。
「制度が複雑すぎて、もう追いつけない」――そんな本音が、現場からは漏れ聞こえてきます。
6. まとめ|2027年大改正への「助走期間」をどう生き残るか
2026年度の介護報酬改定は、2027年の大改正への助走期間と位置づけられています。
今後のスケジュール
- 2026年6月: 処遇改善加算の拡充(賃上げ)
- 2026年8月: 食費改定
- 2027年4月: 次回介護報酬改定(大改正)
2027年の改定では、診療報酬との同時改定が予定されており、医療と介護の連携強化、地域包括ケアシステムのさらなる推進が焦点となる見込みです。
事業所が今すべきこと
- 誓約書の準備
- 上乗せ0.7万円を取得するため、ケアプランデータ連携システム導入の誓約書を準備する。
- 費用支援情報のチェック
- 補正予算による利用料免除や導入支援の詳細を、厚生労働省や自治体の情報で確認する。
- 利用者への説明準備
- 8月の食費改定について、第3段階の利用者への説明資料を作成する。
- 2027年改定の情報収集
- 診療報酬改定や地域包括ケアシステムの動向を注視し、次の改定に備える。
制度変更の波が続く中でも、スタッフを大切にする経営を貫く事業所があります。次のセクションでは、福祉業界で働きやすい職場を探している方に向けた情報をご紹介します。
参考情報
- 厚生労働省「第253回社会保障審議会介護給付費分科会(2026年1月16日)」
- 社会保険研究所「介護報酬改定2026の解説」
厚生労働省「
介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」実施要綱
制度の詳細については、厚生労働省の公式通知をご確認ください。
各都道府県・市区町村の介護保険担当課
誓約書の様式、提出方法、申請期限など、具体的な手続きについては所轄の窓口にお問い合わせください。
補助額の計算方法や申請書類の書き方について
実施要綱の読み解き方、計算ミスが多いパターン、必要書類の一覧については、以下の記事で詳しく解説しています。
[関連記事]【2026年1月】介護月1万円申請法|ケアマネージャー独自ルートと誓約書活用
【関連情報】福祉業界で働きやすい職場を探すなら
制度が複雑化し、事務負担が増える中でも、「スタッフの笑顔を最も大切にする」という理念を貫く事業所があります。
株式会社朝焼け(東京都中野・練馬・杉並エリア)では、障害福祉サービスを提供しながら、以下のような働きやすい環境を整えています。
- 月100〜110時間(介護業界平均140〜160時間より約30時間少ない)
- 副業・Wワーク歓迎(月1日からの勤務OK)
- 資格取得費用全額会社負担
- 交通費全額支給+食事手当(移動支援スタッフ)
事業の約7割がガイドヘルパー(移動支援)であり、動物園や水族館、映画館などへの外出支援を通じて、「障害者と一緒に楽しむ介護」を実践しています。
無理なく長く続けられる働き方と、社会貢献を両立したい方は、ぜひ一度ご覧ください。






