「利用者さんに拒絶されたらどうしよう」
「コミュニケーションが取れなかったら、どうすればいいんだろう」
障害福祉の仕事に興味を持ちながらも、そんな不安が頭をよぎって、一歩を踏み出せない人は少なくありません。
実は、株式会社朝焼けの代表・小泉賢貴も、最初から「できる人」だったわけではありません。初対面の利用者様に「帰れ!」と怒鳴られ、その夜は「もう行きたくない」と本気で悩んだ経験を持つ一人です。
この記事では、そんな代表が「コーラ」1本で利用者様と心を通わせるまでの実話をお伝えします。
「自分にできるか不安」と感じているあなたに、少しだけ希望を届けられたら嬉しいです。
自信満々の初日、玄関先での「洗礼」
当時、小泉はまだ20代前半。学生時代にボランティア経験があり、福祉の仕事に対して、どこか根拠のない自信を持っていました。
「人と接するのは得意だ」「きっとうまくやれる」
そんな気持ちで迎えた、ガイドヘルパーとしての初仕事の日。担当することになったのは、知的障害のある松田さん(仮名)でした。
玄関のチャイムを押し、ドアが開いた瞬間、小泉は元気よく挨拶しました。
「こんにちは!今日からよろしくお願いします!」
返ってきたのは、想像とはまったく違う言葉でした。
「黙れ!出てけ!帰れ!」
松田さんは顔を真っ赤にして、怒鳴り続けていました。
小泉は、その場で足がすくんでしまいました。何が起きたのか、理解が追いつかない。ただ、心臓がドクドクと音を立てているのだけは分かりました。
その日は、結局、何もできずに帰りました。
夜、布団の中で、同じ言葉が何度も頭の中を回っていました。
「帰れ」
「出てけ」
翌朝、小泉は上司に連絡を入れました。
「すみません……松田さんの担当、代わりの人はいませんか」
正直に言えば、もう二度と行きたくなかった。自分には向いていなかったのかもしれない。そう思っていました。
拒絶の裏にあった「本当の理由」
上司からの返事は、シンプルなものでした。
「もう一度だけ、行ってみてほしい」
逃げたい気持ちは消えませんでした。でも、ここで逃げたら、きっとこの先もずっと逃げ続けることになる。
そう思って、小泉は松田さんのことを調べ始めました。
ご家族に話を聞く。通っている作業所のスタッフに聞く。過去に担当したヘルパーに聞く。
そうして分かったのは、松田さんが「怖い人」なのではなく、「知らない人が突然来る」という日常の変化に、強い不安を感じるタイプだったということでした。
「パニック」の正体を知る
知的障害や自閉症のある方の中には、日常のルーティンが崩れることに強いストレスを感じる人がいます。
「いつもと違うこと」が起きると、頭の中が混乱し、不安や恐怖が一気に押し寄せてくる。その結果が、怒りや拒絶という形で表に出ることがあります。
松田さんにとって、「知らない人が玄関に立っている」こと自体が、すでに大きな負荷だったのです。
そこに、元気いっぱいの挨拶。
松田さんの立場で考えれば、「怖い」と感じて当然でした。
小泉が怒鳴られたのは、嫌われたからではありません。松田さんが、自分を守ろうとした結果だったのです。
アプローチを変える
この気づきが、小泉の行動を変えました。
「仲良くなろう」とするのは、まだ早い。
まずは、「この人は敵ではない」「安心していい存在だ」と認識してもらうところから始めよう。
そう考えた小泉は、毎日、松田さんの家に顔を出すことにしました。
何かをするわけではありません。ただ、顔を見せる。少しだけ挨拶をして、すぐに帰る。
それを、何日も、何日も続けました。
「同じ人が、同じ時間に、同じように来る」
その繰り返しが、松田さんにとっての「安心」になっていきました。
沈黙を破った「魔法の言葉」
顔を見せるだけの日々が続く中、小泉はもう一つ、大切な情報を手に入れていました。
松田さんが「コーラが大好き」だということ。
事前の聞き取りで、ご家族から教えてもらっていたのです。
「好きなもの」を入口にする
障害のある方との関係づくりで、「好きなもの」は強力な入口になります。
言葉でのコミュニケーションが難しい場合でも、「好きなもの」を共有することで、心の距離が縮まることがあります。
食べ物、飲み物、音楽、キャラクター、場所――何でもいい。
相手が「好き」と感じるものを知り、それを一緒に楽しむ提案をする。
これは、障害福祉の現場で使える、シンプルだけど強力なアプローチです。
ある日、いつものように訪問した小泉は、緊張しながら、一つの提案を切り出しました。
「松田さん、良かったら一緒に、大好きなコーラを飲みにいきませんか?」
沈黙が続きました。
小泉は、また怒鳴られるかもしれない、と身構えていました。
でも、松田さんの反応は、予想とは違いました。
黙ったまま、玄関の靴を履き始めたのです。
そして、外に出てきてくれました。
その日、二人で近くの自動販売機まで歩き、コーラを買って、ベンチで一緒に飲みました。
会話らしい会話は、ほとんどありませんでした。
でも、隣に座って、同じコーラを飲んでいる。
それだけで、小泉には分かりました。
「繋がれた」と。
半年後の変化
半年後。
小泉が松田さんの家のチャイムを鳴らすと、ドアが開いた瞬間、松田さんは笑顔で手を挙げてくれるようになっていました。
「よっ!」
ハイタッチ。
初日に「帰れ」と怒鳴られた同じ玄関で、二人は笑い合っていました。
失敗から始まった会社だから、「未経験」を歓迎します
この経験から、小泉が学んだことがあります。
「うまくいかない」のは、相性のせいでも、自分の能力のせいでもない。
障害の特性を理解し、相手のペースに合わせた準備ができていれば、関係は必ず変わっていく。
逆に言えば、最初からうまくいく人なんて、ほとんどいない。
あの経験が、今の理念につながっている
小泉は今、株式会社朝焼けの代表として、東京都中野区・練馬区・杉並区で障害福祉サービスを提供しています。
朝焼けが掲げる理念は、「社会」と「障害者」の架け橋になること。
この理念は、最初から立派な志を持っていた人が作ったものではありません。
玄関先で怒鳴られ、逃げ出したくなり、それでも向き合い続けた経験の中から、少しずつ形になっていったものです。
松田さんとの出会いがなければ、「架け橋」という言葉は生まれていなかったかもしれません。
あの日、逃げずに向き合ったからこそ、今がある。
小泉自身が、そう振り返っています。
だから、「最初から完璧」は求めない
朝焼けでは、「最初から完璧な対応」など求めていません。
失敗していい。
分からなければ、聞けばいい。
一人で抱え込まなくていい。
そういう文化を、意識的に作っています。
朝焼けが大切にしているのは、「利用者様」「スタッフ」「社会」の3つの絆です。
スタッフ同士が互いを尊重し、支え合う。
一人で悩まず、日々の不安を気軽に相談できる。
そうした環境があるからこそ、未経験から始めた人でも、少しずつ自信をつけながら成長していけます。
代表自身がこれだけ失敗し、悩んだ経験があるからこそ、同じように「怖い」「不安」と感じている人の気持ちが、朝焼けには分かります。
最後に
「障害福祉の仕事は難しい」
そう感じているなら、まずは一度、私たちの現場を見に来ませんか?
失敗談も含めて、包み隠さずお話しします。
履歴書は不要です。説明会や見学だけでも、気軽にお越しください。
東京都中野・練馬・杉並エリアで、あなたの「やってみたい」という気持ちを、私たちは歓迎します。






